のぎぽと本

ブックレビューを中心に書いてきます

小さいころ大好きだった絵本を大人になって読み返したら、全然違ってみえた話

思い出深い絵本ってありますよね。

先日『おふろだいすき』という本に再開し、久しぶりに読んでみて、発見したことがありました。

その気付きを紹介しつつ、オススメします!

 

1982年に発行されたこの絵本、手元にある2018年のもので第112刷と世代を超えて愛されている作品です。

読んだことのない方には一度手に取っていただきたい。

そして読んだことがある方にはぜひもう一度、違う視点で読んでみてもらいたい!

お風呂上りのように、心がホカホカになる絵本です。

 

 

こんなおはなし

主人公のまこちゃんは、ひとりでおふろに入れる男の子。物語はまこちゃん=「ぼく」の視点で語られます。

「ぼく」がアヒルのおもちゃプッカとおふろに入ると、なんと浴槽から大きなカメが現れます。

おしゃべりで競争ばっかりしている双子のペンギン、無口なオットセイ、小心者のかば…

次々登場する個性的な動物たちといっしょに体を洗って、お湯に浸かって。おふろで起きる不思議で楽しい小さな冒険のお話です。

 

優しくてあたたかい絵がすてき

男の子の上気した耳や膝、濡れてツルツルのおふろの床、ホカホカの白い湯気。

シャボン玉の美しい虹色は、小さいころから特に印象に残っています。

動物たちの描写はしっかりとしたリアリティがありつつ、素朴で愛嬌のある表情。

柔らかいタッチの絵に、読んでいてリラックスできそうなほどの心地よさを味わえます。

 

ファンタジー絵本じゃなかった!?

自分の家の浴槽から動物が現れて、しゃべって、いっしょにお風呂に入って…

子供心に「こんな楽しいおふろに入りたい!」と非日常の冒険にワクワクして憧れたものでした。

この絵本は“まこちゃんの不思議な体験”を描いたお話だと思っていたからです。

 

確かに現実にはありえない展開です。

しかし、何度か読み返し、大人になった私は思いました。

これは、絵本の中の世界で“起こったこと(=まこちゃんの体験)”ではなく、“まこちゃんの想像”を描いた作品なんじゃないかと。

 

 

実際、彼は突然現れた動物たちに驚くものの即座に順応します。

またお母さんが顔を出した途端に彼らが隠れて消えてしまっても、まるで何事もなかったかのようにそのままお風呂からあがります。

 

「ファンタジーのお話だから」という理由でも説明できますが、彼の頭の中での出来事だったからと考えると、もっと腑に落ちます。

 

 

きっと彼は、いつも想像力を膨らませて遊んでいるのでしょう。

そして、そんなおふろの時間を楽しむことが、大好きなのでしょう。

 

 

そう考えると、物語の最後の言葉のニュアンスも違って感じます。

 

 

「ぼく、おふろだいすき。きみは、おふろがすきですか?」

 

 

大人こそ見習いたい!人生の達人術

まこちゃんは、外から与えられた冒険ではなく、自分で冒険を、大好きを生み出していたという考察でした。

大した発見じゃない?

いえいえ、これは小さな衝撃です。

 

大人にこそ読んでほしい理由は、まさにこの自主性・人生を楽しむ達人術を彼に学びたいと思ったからです。

そう、自宅のお風呂に動物がやってこなくても、不思議な冒険を楽しむことができるのです。

 

自分で大好きを作っていって、心地よい時間を過ごすことは、人生の幸福度をあげる極意じゃないでしょうか。

 

 

『おふろだいすき』

 

初めてでも久しぶりでも、ぜひ彼といっしょにワクワクしてください。

読んだあとお風呂で思い出したとき、きっとあなたも「おふろだいすき」になっているはずです。

 

おふろだいすき (日本傑作絵本シリーズ)

おふろだいすき (日本傑作絵本シリーズ)

  • 作者:松岡 享子
  • 発売日: 1982/04/30
  • メディア: 大型本