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『思考の整理学』ブックレビュー

『思考の整理学』
著:外山滋比古


1986年第1刷発行のこちらの本。
2015年第104刷。すごいです。
多くの人に読み継がれる、”考えること”についてまとめた本です。


自分では”考えすぎる性格”だと思っていたのに、いざ誰かと何か話でもすると自分の意見がまとまらず、
日頃自分がいかに何も考えていなかったかを思い知って恥ずかしくなることがあります。

勝手に頭に浮かんでくることについてただ思うのと、物事について意識的に思考することは違う。

自分の考えを人に話せるようになるには、思いつくまま言葉を口に出すのではなく、
自分の中で思考して、自分の考えとして落とし込んで、それを言語化して初めてできるんですね。
何について考えるか、どう考えるか、それを深く広げていくか…
本の中では論文の題材についての話が出てくることもありますが、そこまでしない日常でも、もっと”考える”ということを楽しむことができそうです。


この本では、Ⅰ~Ⅵまでの章に、それぞれテーマに添った話が6Pにまとまっています。
考えの深め方、まとめ方―醗酵させたり、寝かせたり、カクテルしてみたり。
ひらめきについて。整理する、忘れる、描いてみる、しゃべる。
思考についての様々な角度からの考察や手法が短い文で簡潔にまとまっています。

朝飯前は考え事をするのに一番良いから、昼まで朝飯を食べずにずっと朝飯前。
昼食後、一回良く寝たらまた朝みたいなもんだから、夜までまたずっと朝飯前。

ということが書かれた話「朝飯前」は思わず笑ってしまいました。
難しい話ばかりでなく、読み物としても面白いです。


思えば”ものの考え方”について、教わることってあまりなかったように思います。
「自分の頭で考えなければダメだ!」と言われても、そもそも何をどう考えたら良いのかわからずに困ってしまう。
今現在の教育に明るくないですが、1980年代に著者が語るこの難しい問題が今でも続いていることも、
この本が永く愛読されている理由のひとつかもしれませんね。

考えることについて考えるヒントと楽しさが詰まった一冊でした。

 

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)